デンタルクリニック青木

誤嚥性肺炎と歯周病の関係|
お口のケアが命を守る理由を 歯周病専門医が解説

誤嚥性肺炎と歯周病の関係|
お口のケアが命を守る理由を 歯周病専門医が解説

はじめに

「歯磨きが肺炎予防につながる」

そう聞くと意外に感じる方も多いかもしれません。しかし近年の研究により、お口の中の細菌と肺炎には深い関係があることが明らかになっています。
特に高齢者では、お口の中の細菌が肺に入り込むことで発症する「誤嚥性肺炎」が大きな問題となっています。
日本は超高齢社会を迎え、肺炎は高齢者の主要な死亡原因の一つです。そのため医科・歯科の両分野で「口腔ケアの重要性」が強く認識されるようになりました。
実際に専門的な口腔ケアによって肺炎の発症率や死亡率が低下することも報告されています。

今回は歯周病専門医の立場から、誤嚥性肺炎と歯周病の関係について詳しく解説します。

誤嚥性肺炎とは?

誤嚥性肺炎とは、本来は食道へ送られるはずの唾液や食べ物が誤って気管や肺へ入り込み、その中に含まれる細菌によって肺炎が起こる病気です。

特に
• 75歳以上の高齢者
• 脳梗塞後の患者さん
• パーキンソン病患者さん
• 認知症患者さん
• 寝たきりの方

で発症しやすくなります。
高齢になると飲み込む力(嚥下機能)が低下するため、気づかないうちに少量の唾液を誤嚥していることがあります。
これを「不顕性誤嚥」と呼びます。

お口の中には どれくらい細菌がいるのか

健康なお口の中にも数百種類以上の細菌が存在しています。
しかし歯周病が進行すると細菌数は大幅に増加します。
歯周ポケットの中には
• Porphyromonas gingivalis
• Tannerella forsythia
• Treponema denticola
などの歯周病原細菌が大量に存在します。

また、
• 舌苔(舌の汚れ)
• 歯石
• 入れ歯の汚れ
にも細菌が付着します。
口腔衛生状態が悪い場合、唾液1㎖中に数億個以上の細菌が存在するといわれています。

なぜ歯周病が誤嚥性肺炎につながるのか

細菌が肺へ流れ込む

歯周病によって増殖した細菌は唾液の中に存在しています。睡眠中や食事中に誤嚥が起こると、これらの細菌が肺へ入り込みます。肺の免疫機能が低下している高齢者では、侵入した細菌を十分に排除できず肺炎が発症します。

炎症が肺炎を悪化させる

歯周病では

  • IL-1β
  • TNF-α
  • IL-6

などの炎症性サイトカインが産生されています。

これらの炎症物質が全身へ広がることで、肺の防御機能を低下させる可能性も指摘されています。

歯周病菌そのものが肺炎に関与する

近年では歯周病菌が肺炎患者の気道から検出されることも報告されています。

つまり単なる「お口の細菌」ではなく、肺炎の原因菌として直接関与する可能性があります。

口腔ケアで肺炎は予防できるのか

このテーマで最も有名な研究が、Yoneyamaらによる介護施設入所高齢者を対象とした研究です。

専門的な口腔ケアを継続したグループでは、

  • 肺炎発症率の低下
  • 発熱日数の減少
  • 肺炎死亡率の低下

が認められました。

この研究は世界的にも高く評価されており、現在の高齢者口腔ケアの根拠となっています。

誤嚥性肺炎予防のために重要なこと

毎日の歯磨き
歯垢(プラーク)は細菌のかたまりです。毎日の丁寧な歯磨きによって細菌数を減らすことが重要です。

舌の清掃
高齢者では舌苔が多く付着していることがあります。舌ブラシを使用した清掃も有効です。

入れ歯の清掃
義歯には大量の細菌や真菌が付着します。毎日の洗浄が欠かせません。

定期的な歯科受診
セルフケアだけでは歯石や深い歯周ポケットの管理は困難です。定期的な専門的口腔ケアが重要です。

ご家族に知っていただきたいこと

高齢になると本人が十分に歯磨きを行えなくなることがあります。
ご家族や介護者が、

  • 歯磨きの介助
  • 義歯清掃
  • 歯科受診のサポート

を行うことで肺炎リスクを大きく減らせる可能性があります。誤嚥性肺炎予防は、ご本人だけでなく周囲のサポートも重要です。

歯周病専門医の見解

歯周病は歯を失う病気として知られていますが、高齢者ではそれ以上に「全身の健康」に与える影響が重要になります。診療の中でも、口腔ケアが行き届いている患者さんほど歯周病の進行が少なく、全身状態も安定している印象があります。
超高齢社会の日本において、歯周病予防は肺炎予防であり、健康寿命を延ばすための重要な医療であると考えています。

デンタルクリニック青木へご相談ください

当院では日本歯周病学会歯周病専門医が診断・治療を担当しております。高齢者の歯周病管理や専門的口腔ケアにも力を入れており、誤嚥性肺炎予防を見据えた診療を行っています。

  • 歯ぐきから血が出る
  • 入れ歯の汚れが気になる
  • 高齢のご家族のお口の状態が心配
  • 最近歯科を受診していない

このようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

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参考文献

  1. Yoneyama T, Yoshida M, Matsui T, Sasaki H. Oral care and pneumonia. Lancet. 1999;354(9177):515.
  2. Yoneyama T, Yoshida M, Ohrui T, et al. Oral care reduces pneumonia in older patients in nursing homes. J Am Geriatr Soc. 2002;50(3):430-433.
  3. Scannapieco FA, Bush RB, Paju S. Associations between periodontal disease and risk for nosocomial bacterial pneumonia and chronic obstructive pulmonary disease. Ann Periodontol. 2003;8(1):54-69.
  4. Sjögren P, Nilsson E, Forsell M, Johansson O, Hoogstraate J. A systematic review of the preventive effect of oral hygiene on pneumonia and respiratory tract infection in elderly people in hospitals and nursing homes. J Am Geriatr Soc. 2008;56(11):2124-2130.
  5. Scannapieco FA, Cantos A. Oral inflammation and infection, and chronic medical diseases: implications for the elderly. Periodontol 2000. 2016;72(1):153-175.
  6. 日本老年医学会. 高齢者の誤嚥性肺炎診療ガイドライン.

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